ネットの活用が、集客・売上げを左右する。
改めて書くまでもなく、今現在、観光にたずさわる方々にとってネットの活用はとても重要です。
これまでの団体旅行中心の観光から個人や少人数の観光へと変化し、また、これまでは観光雑誌から情報を得ていたものがインターネットによる情報収集へと変化し、電話による予約からネットを活用した予約へと変化するなど、ターゲット及び情報発信のスタイルが大きく変わりました。加えてここ数年、スマートフォンの普及とソーシャルメディアの利用者増加に伴い、実際に観光に来ている瞬間そのものが情報発信の場へと変化しています。
この大きな変化により、観光施設・宿泊施設・飲食店・お土産特産品の製造元・観光協会・旅行業界などは、情報の発信スタイルを大きく変え、ネットを効果的に活用していくことが求められます。
しかし、特に地方の観光事業においては、ネットをどのように活用しいいのかに悩んでおられたり、ホームページで基本的な情報だけを掲載するという従来型の情報発信スタイルから抜け出せないでいたり、そもそも(都市部の)利用者がどのようにネットを利用して調べているのかを知らないでいたりするケースが非常に多く見られます。
これはたいへんもったいないことです。せっかくネットを利用して皆さんのことを調べてくれようとしいるのに、それに応えることができていないのですから…。観光地や観光施設について多くの魅力とわくわく感を届けてあげることで、その地に来ていただき、楽しんでいただき、ファンになっていただける、そのようなネット活用を実践したいところです。
ネット利用の "もったいない" 例
観光関連の情報発信を見ていると、「これはもったいないなぁ…」という事例がたくさんあります。
今回はその中から3つ紹介したいと思います。
【事例1】
イベントの開催告知だけで終わってしまう
「○月○日に○○祭りが開催されます。」とホームページに掲載し、ポスターの画像をアップするだけで終わってしまうケースが良く見受けられます。これはいくつか損をしています。
- 画像でポスターをアップしただけで、イベント内容をテキストデータで掲載していない場合、検索でその情報が引っかかることはありません。ですから、そこに情報が掲載されていることを知っている人だけが見るということになります。多くの方に来ていただきたい場合、これは大きな機会損失です。
- イベントの開催前は一生懸命宣伝しても、イベント開催中や開催後に報告・レポートという形でさらに情報を掲載するところは多くありません。報告・レポートとしてイベントの様子や盛り上がった雰囲気を紹介することは、実は、次年度の開催告知における重要な宣伝材料になります。また、次年度の開催までの間、検索などを通じてずっとそのイベントのことを宣伝し続けてくれる大変重要な宣伝マンなのです。
【事例2】 従来型の情報発信に固執してしまっている
従来型の情報発信とはどのようなものでしょう。これまで観光地が自身を宣伝できるのは、限られたメディアの広告や観光雑誌の誌面という限られたスペースでしかありませんでした。言ってみれば、限られた掲載枠の中で、施設名と場所とインパクトある写真とによって名前を覚えてもらうということが主な戦略です。
一方、ネットの活用においては、掲載枠という限られたものはありません。どんなにたくさん説明してもいいですし、さまざまな切り口で情報を発信してもいいのです。しかし、圧倒的多くが、紙のパンフレットをホームページにしたような「施設概要」主体の情報に留まってしまっています。
例えば、カブトムシを展示している施設であれば、国内のホームページの中で最も詳しくカブトムシについて説明・紹介していていいのです。そうすれば、その施設を知らない人でも、カブトムシのことを知りたい人がどんどんサイトを見に来てくれます。おのずと、その施設のことを日本中のカブトムシ好きな人が知ることになり、施設を訪れてくれるきっかけを作ることができるのです。このように考えると、「カブトムシを展示しています」と写真5枚だけ掲載した施設紹介では本当にもったいない…ということはご理解いただけるかと思います。
そして、この考え方はあらゆる観光施設にも当てはまることなのです。
【事例3】 観光地に来ている方が発信している情報を知らない
観光施設側が情報発信し、それを見た観光客が来て楽しんで帰る。今は単純にそういうスタイルではありません。
スマートフォンなどを利用して、観光地に来ているまさにその瞬間に、「この景色はいい!」「おいしい!」「すごい!」などとリアルタイムで情報を発信しているのです。従来型の情報発信では、観光地について情報を発信するのは観光地側だけで、観光客は情報を受信するだけでした。しかし今は、観光客自身が、リアルタイムで、観光地側が発信する情報以上に圧倒的な質と量で情報を発信しているのです。さらに、帰宅した後も、ブログや口コミサイトを通じて、観光地の体験について報告や評価を発信しているのです。
これは、天地がひっくり返るぐらい大きな変化です。観光地を訪れる方の情報取得方法やコミュニケーション方法が、これまで何十年も続いてきた手法から大きく変わったわけですから。しかし残念なことに、このことの持つ、観光地の戦略上の意味に気づいていない観光地や観光施設が非常にたくさんあります。これはとてももったいないことです。
観光地を訪れた人が発信する、膨大な数の体験談や感想。
では、実際にどんな情報が発信されているのでしょうか。そのいくつかを紹介します。
(1) 下記は、Google が提供しているブログ検索です。皆さんの観光地や観光施設を検索してみてください。
皆さんの観光施設にいらした方が、どんな体験をし、何を感じて帰られたのかがお分かりいただけるかと思います。
http://www.google.co.jp/blogsearch
(2) 旅行の口コミサイトです。
こちらで皆さんの観光地や観光施設を探してみてください。
(3) 食堂・レストランの口コミサイトです。
皆さんの観光地にある食べ物屋さんを検索してみてください。どんな感想が寄せられていますか?
(4) Twitter では、多くの方が、自分の体験や感想を情報として流しています。
(4-1) 観光地名や施設名で検索してみてください。(例 : 入笠山)
(4-2) ある地域内から発信されている tweet を検索してみください。
「near:長野県諏訪郡富士見町 within:10km」と検索すれば、富士見町周辺半径10kmから発信されものが検索できます。地名と距離を変更して検索してみてください。
もしくは、↓の検索画面から
https://twitter.com/#!/search-advanced
(5) iPhone で Localscope (170円)をダウンロードしてご覧になってみてください。動画、写真、ここに来たよ!という情報、施設の情報や感想など、今いる場所の周辺について、どれだけ多くの情報がネット上に公開されているかに驚かれると思います。(iPhone をお持ちでない人は、知り合いのに借りてでもぜひ見てください。)しかも、その情報のほとんどは、観光地や観光施設側が発信した情報ではなく、訪れたお客さんが発信した情報なのです。
http://itunes.apple.com/jp/app/localscope/id409869453
ここで取り上げたのは、ほんの一例です。
ここでご理解いただきたいのは、これまで観光地に関する情報は、観光客を誘致するために観光地側(=地方)が一生懸命発信するものでした。しかし、ここで見たことは、観光地を訪れた人が、観光地側の何百倍、何万倍も情報を発信しているということです。その情報は、発信者の友人に届き、どこかいいところはないかなぁ…と探している新しい別な人にも届くのです。
テレビや新聞や雑誌といった旧来のメディアにこの膨大な情報が掲載されることはありませんし、(地方では特に)誰もこんなに沢山の情報が公開されていることを教えてくれる人もいません。でも、利用者はこれらの情報を発信し、感想を伝えあい、次の行動へと結びつけているのです。もしかしたら、「知らないのは当の観光地側だけ…」という怖いことすらありえるのです。
観光地が取り組むべき、ネットを活用した新しい戦略。
これまで見てきた現実を踏まえると、これまでのようにパンフレットを作成し、ホームページで施設の紹介をするという従来型の情報発信では、完全に立ち遅れてしまうことはご理解いただけるかと思います。
観光客に来ていただけるようにする集客の場面では、従来型の情報発信に加えて、訪れた方が発信してくれた膨大な情報を利用させていただくことがポイントになります。観光地・観光施設側が発信した情報よりも、そこを実際に訪れた人の情報の方が信憑性が高いと認識されますので、素敵な体験談がたくさんブログに掲載されていればそれだけで宣伝や来ていただけるきっかけづくりになるわけです。
※情報発信する際には、「情報の切り口を従来とは違うものに変えるといい」ということや、「ホームページ、ブログ、facebook、twiiter などをどのような組み合わせで使うか」という、いくつかのポイントがあります。こちらは長くなりますのでまた別な機会に紹介します。
観光地に来ている人は、その都度、「今ここにいる!」「こんな素敵なものを食べた!」と情報を発信しています。合わせて、次にどこに行ったらいいのかをスマートフォンなどを通じて一生懸命調べます。素敵な風景の写真が見つかれば、そこに行くことにもなるでしょう。これまでは、観光施設に来て初めてお客様と接することになりした。しかし、今は、皆さんの観光施設の周辺にいて「この後どこに行こうかなぁ…」と調べている人に対して、自分たちの観光施設のことを気づいてもらうためにはどんなことが有効か、という発想が可能になります。ネットの活用が進歩したからこそ可能なアプローチです。
また、観光が終わった後もネットの活用が重要になります。これまでは、お客様が観光地や観光施設を離れてしまった瞬間に全く縁が無くなってしまうのが一般的でした(縁が続くのは、旅館の宿泊者名簿によるDMぐらいです)。しかし、今は、来てくださったお客様は次の日にブログに観光地での出来事を紹介してくれるかもしれませんし、口コミサイトに感想を投稿してくれるかもしれません。そこでまたお客様との縁がつながるとともに、掲載されたその情報は、また新しい別なお客様が見る参考情報にもなるというわけです。
さらに、これらの感想は、単に次のお客様の参考情報になるだけでなく、観光地や観光施設を改善していくための貴重な情報源にもなります。これまで観光地は、訪れた方がどんな感想を持って帰って行ったのかを知る術がありませんでした。唯一、「訪れた人の数」というものが評価でした。
しかし、ブログや tweet、口コミサイトに投稿された内容を詳細に見ることで、これまで手に入れることができなかった「訪れた方の感想」を知ることができるです。観光施設側が思いもよらないところが評価されていたり、「この企画はいい!」と思って実施したのにもかかわらずあまり評価されていなかったり、そういうことがわかるようになります。(ただし、情報のバイアスに注意です。)
また、ブログで紹介されている旅行記を見ることで、どこをどう回ってこの観光地・観光施設を訪れたのかという、観光客の導線もわかりますので、大変貴重な情報源なのです。
※もちろん、従来型の情報発信やパンフレットやホームページもとても重要です。これを外すわけにはいきません。しかし、訪れた方が情報を発信するということを前提にした作り込みや、発信する情報に相乗りできるような仕組みを戦略的に組み入れておくような、考え方の変更と工夫が必要です。
ここまで来ると、観光におけるネットの活用が、単にホームページをきれいに整えて施設概要を紹介し、イベント案内を掲載するという次元ではないことにお気づきいただけると思います。地方におけるネットの活用はまだまだはじまったばかりで、ほとんどの地域が本格的に手を付けていません。地方にとって観光は大変重要な収益事業ですから、ぜひ、ネットを活用した新しい取り組みを他よりも早くスタートさせていただきたいと思います。
最後にもう一つ。これらの観光におけるネット活用の取り組みは、観光施設1ヶ所だけがやるよりも、その観光地が一丸となって進める方が効果的です。しかし一方で、規模が大きければ大きいほど、その考え方を理解してもらったり行動を共にするのに時間がかかってしまいます。逆に言えば、規模が小さいところでこの重要性に気づいたところが最も早く推し進めることができるというわけです。自治体や観光協会が取りまとめるということもできるでしょう。しかも、数億円をかけて観光施設を作るのとは違い莫大なコストがかかわるわけではありませんから、余計に規模が小さいところほど勝機があると言うこともできます。
Be-chu のお手伝いできること
観光にたずさわる方、またお土産や特産品に関わる方にお話しを伺うと、多くの方はご自身の現場に忙しくて、ネットをどのように活用していいのかわからないでいらっしゃるという方が非常に多くいます。ネットを活用したいとは思っていても、頑張ってホームページを作るあたりで力尽きてしまいます。
まずは、この場で説明してきたように、観光とネットとの関係が今どのようになっているのかと言う現実をしっかり認識するところが第一歩です。観光地の多くは地方ですが、地方では都市部に比べると圧倒的にネットを利用する頻度が少ないのが実情です。ですから、都市部の人がネットをどう利用しているかを感覚的に理解できないままに、「次は twitterだ」「次は Facebook だ」という業界のニュースソース的な情報だけに目が行ってしまいがちです。
観光とネットとはとても親和性が高い組み合わせですから、今何が起きていて、どんな可能性があり、この観光地の魅力をどのようにして伝えていくことができるのか、ということを、観光にたずさわる多くの方が、今一度しっかりと認識し直すことが重要だと考えています。
Be-chuでは、次のようなお手伝いが可能です。
- 観光とネットの活用に関する教育・研修
- ネット活用に関する戦略立案やプロジェクト推進のサポート
- 課題解決に対する情報提供
- サイトリニューアルなどにおけるアドバイザー
- サイトのリニューアル、及び、コンテンツ制作
- その他、コンサルティング
■事例・実績から
「観光地域づくり」と 日本版DMO
ビーチュー代表の雨宮は、観光庁認定の「観光地域づくりマネージャー」として、地元の「八ヶ岳観光圏」で活動をしております。
また、観光庁が推進している「日本版DMO」の登録団体の一員としても活動をしております。
私の「観光地域づくり」「日本版DMO」の取り組みについては、下記、専用ブログで(時々)紹介しております。
「進め!観光地域づくりマネージャー in 八ヶ岳(地域の誇り / マーケットの視線)」
あわせてご覧いただけましたらと思います。
こちらのブログ記事も合わせてどうぞ
小さい町の観光サイトの作り方(シリーズ全7話)
第1話 小さい町ならではのメリット
第2話 小さい町の観光サイト 考え方と戦略
第3話 観光サイト 作り方のポイント
第4話 事例紹介
第5話 運用の考え方
第6話 今後の動き 日本版DMO との関係を考える
第7話 「都会の視線」と「地方の視線」
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- 自治体サイト担当者様 …… 自治体ホームページの課題と可能性を知る。
- 観光に関わる皆様 …… ネット活用の "もったいない!" 事例を紹介。