第1話 小さい町ならではのメリット
第2話 小さい町の観光サイト 考え方と戦略
第3話 観光サイト 作り方のポイント
第4話 事例紹介
第5話 運用の考え方
第6話 今後の動き 日本版DMO との関係を考える
第7話 「都会の視線」と「地方の視線」
高知大学「こうち観光カレッジ」にて、観光のネット活用戦略についてお話ししました
今回、こんなタイトルで何回かに分けてお話ししてみようと思います。
実はこのお話、私が色々な自治体様でお話しさせていただく「自治体サイトの課題と今後のあり方」という講演の中にも出てくる内容です。
やわらかい表現でオブラートに包んでいますが、時々手厳しいことを言っている箇所もあります。ぜひ全国の小さい自治体の皆様のご参考に、そしてお力になればと思います。
第1話 小さい町ならではのメリット
第2話 小さい町の観光サイト 考え方と戦略
第3話 観光サイト 作り方のポイント
第4話 事例紹介
第5話 運用の考え方
第6話 今後の動き 日本版DMO との関係を考える
第7話 「都会の視線」と「地方の視線」
第1話 小さい町ならではのメリット
小さい町のあきらめ
地方の小さい町や村が観光サイトを考える時、どうしてもネガティブ発想に陥ってしまいがちです。
- 東京や政令指定都市のように潤沢な予算がないので、大きなことはできない..
- インターネットの活用や最新技術に詳しい者が内部にいないので、どうしていいのか…
- うちの町には、○○ランドとか○○温泉などのように、ネットに輝かしく紹介できるような観光名所も知名度もない...
それぞれを詳しく見ていくと、こんな感じになります。
(1)潤沢な予算がない...
予算については2つの要素が含まれています。一つ目は、サイト自体を構築する費用のこと。二つ目は、観光プローションをネット上で展開するための費用です。
「もっと魅力的に情報提供したい」「今の情報サイトを何とかしたい」と真剣に思っていても、なかなか予算が確保できずに後回しになっていく…。そんな状況が小さい町では多いのではないかと思います。
そうなると、「予算規模の大きい自治体や、観光協会がたくさんの予算を持っているところはいいなぁ…」と、きっとそう思ってしまうはず..。
(2)ネット活用や最新技術に詳しいものがいない..
ここにも実は2つの要素が含まれています。
一つ目は、(1)の予算がない..に関係してきます。
つまり、「予算がないなら、職員自ら作ってみろ」→「作るノウハウや知識はさすがに..」ということです。
職員の方がサイト構築やネット活用のスキルを持っていることは非常に稀ですから、これは当然のことです。
もう一つは、仮に予算が作れたとしても、観光サイト自体、何をどうしたらいいのかわからない..ということ。この場合、仕方ないので、予算内で構築してくれる業者さんに丸投げするしかなくなってしまいます。
その業者さんが「愛」ある業者さんだったらいいのですが、「今の最先端はこれです!」と言われればそれに従うしかありません。また、出来上がった後の運用(情報発信やコントロール)は職員の方が進めないといけませんが何をどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。
どういうことかはまた別なか回で触れますが、一番重要なのは、情報を掲載するための「システム操作」ではなくて、「どんな情報を、どこに、どんな形で発信していくのか」という「情報発信プロデュース」です。
「愛」ある業者さんなら、ここのポイントをしっかりと伝授してくれる、ハズ...です(笑)
「愛」という表現では本当はいけないのですが、ひとまずここはこの表現で…(^_^;
(3)そこまで魅力的な名所がない..
これは「ネットでの情報発信」に限ったことではなく、「観光資源の掘り起し」と言われる観光におけるそもそもの領域になってしまいますが、正直、「うちは観光と言ってもなぁ…」という声を聞かなかったわけではありません…(^_^;。「それを言っちゃぁおしまいよ」という感じではありますが、でも、私が地元の地域資源の掘り起しに関わらさせていただいたり、ネットでの情報流通を考えると、「魅力の創造」は無限にあるのではないかと思うようになりました。必要なのは「地元への愛」と「ちょっとした発想の転換」です。
以上、これら3つが、小さい町が観光サイトに取り組む時に感じるハードルであり、ある種のあきらめ感です。
ですが、この後読み進めていただくとおわかりいただけますが、これらは克服、または回避することができます。
(1)については、そもそも、小さい町の観光サイトは、予算規模の大きい自治体の観光サイトとは「方向性」が異なります。また、小さい町だからこその「手法」「手段」があります。
(2)については、これは構築や運用を通して「考え方」や「やり方」を学べば大丈夫です。だからと言って、最先端のWEBマーケティング手法を学ぶわけではありません。むしろ「手法」ではなくて、「どうしてそういうことをするのか」というベースとなる基本的な考え方をしっかりと理解することがポイントです。
(3)についても、地元の人だからこその「愛あるまなざし」があれば大丈夫。いやいや、この「愛あるまなざし」からしか道は切り拓かれない、と言った方が正しいと思います。
小さい町だからこそできること
一方で、小さい町だからこそできること、逆に言うと、規模の大きい自治体ではなかなか手が出せないことがあります。それは次の3つです。
- エリア内の情報を網羅できる
- 表面的な情報だけでなく、深いところまで知っている
- 伝えるべきことを「多角的」に伝えられる
(1)エリア内の情報を網羅できる
そもそも「観光」という定義をどう捉えるのかにもかかわってきてしまうのですが、もう従来型の「観光名所・施設」を中心にした観光という枠組みでは捉えきれなくなってきているといことは、皆さんも感じていらっしゃることだと思います。例えば、地域内のどこかで「マルシェ」や「クラフト市」のようなイベントが開催されて、そこに地域外から人が訪れて、その足で飲食店にも足を運んでくださる…。例えば、地域内のどこかで「カヌー体験」が催されて、そこに地域外から足を運んでくださる…。こういうことも、今では立派な観光ですし、このような「体験型」の観光はどんどん増えています。
※もちろん「観光名所」は大きな集客力・吸引力を持っているのに間違いありませんが、それだけで安泰だった時代は残念なが終わってしまっている…というところに今の地方が直面している課題があるのだと思います。
小さい町では、観光名所とは別にエリア内で開催される色々な企画やイベント、新しい動きをしっかりとキャッチできるというメリットがあります。規模の大きい自治体では、なかなか小さいことがらを集めて網羅することはできません。(もっとも、小さい町は、このようなエリア内の小さい情報をも拾って発信していかないといけない…というのが実際のところではありますが…)
いずれにしても、小さいからこそ、隅々までアンテナで情報をキャッチできるというわけです。
(2)表面的な情報だけでなく、深いところまで知っている
(1)は「広さ」の話でしたが、こちらは「深さ」の話です。
観光サイトの代表的な掲載情報に「飲食店」の紹介というものがあります。規模の大きい自治体でこの「飲食店」の紹介をしようと思ったら、あまりの多さにとてもお店を紹介しきれるものではありません。紹介するにしても、「店名・連絡先」がDBとして掲載されることになります。
例えば、横浜観光情報サイトには、とてもしっかりしたレストランガイドがあります。なかなかここまでやるのも大変でしょうが、これは「ホットペッパー」からデータを取得して作り込まれています。
http://www.welcome.city.yokohama.jp/ja/tourism/gourmet/
規模が大きくなると、このように商用サービスを利用するしかなくなるわけですが、それでもこれだけ美しく作り込まれているのは本当に素敵です♪
小さい町は、これとは全く別。
やろうと思えば全部の飲食店を訪れることができますし、地元の方でしたら店長とも顔なじみだったりしますから。ということは、一つひとつのお店について、それぞれのこだわりや特徴を丁寧に追いかけるて紹介することがきるわけです。
例えば、私が住んでいるここ富士見町の観光サイトでは、飲食店(観光協会に加盟しているお店)の情報を取材したりしながら掲載しています。
http://www.town.fujimi.lg.jp/kanko/eat.html
詳しくは、第4話の事例の回で紹介することになりますが、ひとまずここでお伝えしたいのは、小さい町だからこそ、観光施設やお店について「深く」知り、伝えることが出来るということです。
(3)伝えるべきことを「多角的」に伝えられる
これは(2)の別な側面です。
一般的に観光サイトを作ろうとすると、どうしても「観光辞典」を作ろうと志向します。例えば、「○○子ども公園」があったとすると、「この公園はご家族が子どもと一緒に一日中楽しめる公園です。アスレチックでも遊べますし、芝生の広場で一日中楽しめます。バーベキューやキャンプもできます。」というような紹介になります。
これはこれで間違っていませんし、このように紹介するしかありません。
でも、小さい町ではこれをさらに「多角的」に伝えることもできます。
名称は「○○子ども公園」ですが、ここを「キャンプ場」や「バーベキュー場」として取り上げたり、「四季の移ろいを子ども一緒に体験する場」として取り上げたり、「施設」の視点ではなく、「利用」の視点から多角的に伝えることが出来るというわけです。
僕たちが興味があるのは、その施設のことではなくて、どんな素敵な体験ができるのか、なんですから♪
もちろん規模の大きい自治体でも同じことは可能ですが、施設が大きすぎたりたくさんありすぎたりすることで、なかなかそこまで手が回らなくなってしまう…というのが現状ではないかと思います。
小さい町だからできることはいっぱいある
今回のことをまとめると....
- 規模の大きい自治体は、予算規模が大きいので観光プロモーションなどにもお金を回すことができ「大きいこと」「目立つこと」ができる一方で、エリア規模が大きいが故に、情報が表面的になりやすい。
- 小さい町は、予算規模が大きくないので広告宣伝やプロモーションにお金を回しにくく、「大きいこと」「目立つこと」はやりにくい。一方で、エリア内の情報を丁寧に拾い集めて、それぞれの独自性を多角的に掲載、情報発信していくことができる。
ということです。
小さい町だからと言ってあきらめる必要はなくて、むしろ、小さい町だからこそできることがいっぱいある♪
今回はこのことをぜひ知っていただきたいと思います。
厳しい言い方をすれば、「小さい町だからこそ、できることを使って勝負するしかない」ということでもありますが…(^_^;
次回、第2回は、一番重要な戦略のお話です。
次回もお楽しみに!
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