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Be-Chu' s Perspective

 

「わかりづらい…」という声は姿を消しません。

自治体のサイトがわかりづらい…。
そのような声はずっとずっと前から、本当によく聞かれます。

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インターネット黎明期、多くの自治体では、「技術に腕のある職員」が先頭に立って自治体サイトを準備しました。まだ確立された手法やインフラもありませんでしたので、本当の手探り状態でした。

そして現在、5年ぐらい前から始まった CMS によるサイト構築の波に乗って、多くの自治体がCMS  によるサイト運用に切り替わりました。一度テンプレートを確立してしまえば、HTML というサイト表示を制御するプログラムを知らない職員でもサイトの更新ができることで、多くの自治体がそのメリットを享受しています。

その構築プロセスにおいて、「どのようなメニュー構成にしたらいいのか」「どのような画面デザインにしたらいいのか」ということは、どの自治体も検討したかと思います。

しかし、CMS によるサイト運営に移行しても、散々議論してメニューを考えたとしても、残念ながら自治体サイトに対しては「わかりづらい…」という声は姿を消しません。

 

どうしてなのか…。 

 

まずは基本的な2つを理解。

まず考えないといけないことは、そもそも「自治体サイト」という立場です。

「自治体サイトはわかりづらい…」とはいいますが、「○○の企業サイトはわかりづらい…」という言い方をするかどうか。そういうことは耳にしません。
しかしこれは、企業サイトが「わかりやすい」からではなく、わかりづらければ利用されないだけで、わざわざ使いやすいという声は上げないだけにすぎません。

 

利用されない=見込み客の集客力が落ちる → 売上げに貢献しない… という流れになれますから、企業としてはサイト構造や作り方、サービスの紹介の仕方、ボタンの作り方などに知恵をしぼることになります。この話はまたいつか、このブログでもお話しします。

 

一方、自治体サイトは、「わかりづらければ利用しなければいい」という考えられ方は基本的にありません。ですから万人が利用できるように「利用者にやさしく」というのがコンセプトの土台になります。その上で「ユニバーサル・デザイン」だったり「アクセシビリティ」というキーワードが制作会社やコンサルティング会社から提示されるのではないかと思います。以前、私がこのブログで紹介した「ユニバーサル・メニュー」もこの流れですね。

 

決して、企業サイトがわかりやすくて自治体サイトがわかりづらい、ということではありません。自治体サイトだからこそ、「わかりづらい」という声が上がってくるということです。それはまずはこれを理解しないと、マイナス思考だけになってしまいますのでご注意を。

 

次に、自治体サイトは、自治体規模の大小にかかわらず、基本的に同等の情報量が求められる、ということがあります。全国どこでもほぼ同じ行政手続きが行われますので、政令指定都市だろうと小さい村であろうと、最低限求められる情報量は同じになります。当然ですが、規模が小さいほど負担が大きくなり、その分、サイトに配慮が行かないとという事態に陥ります。

 

 

「わかりづらい」を2つの事例から紐解く


【J】

ここまでは多くの方も想像できることかと思います。
さらに、話を進めましょう。


まずは、「わかりづらい」の具体的な現象から紐解きます。
これから上げる2つの例は、全国のどこでも見られる「わかりづらい」を象徴するお話です。

 

 

■事例1  導線の作り方によって発生する混乱

どの自治体のサイトをご覧いただいてもだいたいそうですが、中心となる行政サイト(この多くは今ではCMSで管理されています)のまわりに非常に多くの関連サイトが運用されています。例えば次のようなものです。

・ふるさと納税を促進するためのサイト
・移住を促進するサイト(Iターンや田舎暮らし)
・観光サイト
・子育てサイト
・お祭りやイベントのサイト


これらのサイトの多くは、たいがい、トップページにバナーがあり、そこからリンクされています。

これら「まわりにある関連サイト」の多くは、自治体サイトとは別予算で(=別な部署が担当)、その度に入札などよって毎回異なる業者が制作することが多いでしょう。そして出来上がったサイトを公開して、トップページからリンクでつないであげるという流れです。
制作側(自治体職員側)から見ると、仕様通りにサイトができ「公開された」のですから問題はありません。しかもトップページからリンクがはられていますので、聞かれれば「トップページのバナーをクリックしてください」と答えることができます。一見すると何の問題もないように思われます。

 

しかし、一般の利用者からするとまったく違う見え方になります。

多くの人がそうだと思いますが、自分が欲しい情報がどこにあるのか探そうする時、通常、バナーはその対象外です。自分の欲しい情報がバナーにあるのか、という見方はしません。メニューの区分にそって、自分が欲しい情報をたどるわけです。それでたどれつけなければ「情報がない」という結論です。

 

仮にトップページのバナーを見つけて、そこから辿れることができたとしましょう。そうすると今度は、「トップページのバナーをクリックすればあの情報にたどり着ける(便利♪便利♪)」という認識になりますので、バナーが消えてしまったり、大きくトップページの構成が変更になったりすると、「昨日まで行けたのに今日から行けない…」という事態に陥ってしまいます。

実際、サイトをリニューアルすると「前はトップページから行けたのに、今度は行けなくなった。リニューアルしたのにかえって使いづらくなった。」なんて言って来たりする人もいます。こう言うのが、サイトをプレビューした部長や首長だったりした日には、担当者は目も当てられない事態に陥ることもあるでしょう(笑)。

※ちなみにこの場合、コンセプトをしっかりと構築した上でトータルで利便性が向上しているのでしたら、間違っても部長の好みに合わせてリニューアル前に戻さないでくださいね…(^_^;)。部長は単に「俺がよく使うボタンがトップページから消えた~!」と、子供のようなことを言っているだけかもしれませんから。その場合、例えば、リニュアル前のトップページも残しておき、慣れている人はしばらくの間そちらから利用していだく…なんていう方法もあります。

 

さて、この事例をひとまずまとめましょう。

「まわりにある関連サイト」(キャンペーンサイトのようなものですね)は、トップページのバナー以外に、利用者が探すであろうメニューの中にもしっかりと組み込んでおく必要があるということですね。設置の仕方、メニューの作り方、導線の作り方に注意が必要だということです。そしてもう一つ理解しておかないといけないのは、このことはCMSの導入 / 未導入とは無関係に発生するということです。

 

 

■事例2  一貫性のなさによって発生する混乱

基本となる自治体サイトの周りには、図書館や公民館、博物館、観光サイトなどもありますね。先ほど申し上げた「まわりにある関連サイト」との違いは、比較的サイトの規模が大きく、かつ継続的に運営されている、というあたりでしょうか。

具体的な例をお話しすれば、ピンッと来ると思います。
例えば、公民館サイトに「○○○○夏祭りを開催します」なんて掲載してあるのに、基本となる自治体サイトのイベントカレンダーには何も掲載されていなかったり、逆に、イベントカレンダーに掲載があって、詳しくは公民館にお問い合わせください♪となっているのに、公民館サイトには何も掲載されていなかったり…。

 

この手の話は挙げ出したらキリがありません…。

これは、統一した情報提供をする「連絡体制」ができていないことに起因します。加えて、統一した情報提供をしないといけないのだという「利用者意識の欠如」です。「利用者がどのようにサイトを利用しているのか」ということへの認識が不足しているという言い方ができるかもしれません。

この場合、全体の情報を管理・統率するWebマスターが必要になります。
通常、自治体は組織ごとに分担されていて、サイトの更新も担当組織で行われているかと思いますが、全部署の情報を横断的に把握し、「ここで情報が掲載されたらこっちも同じように情報を更新する必要がある」ということを判断し、作業を命令できる担当者です。首長直属の部署にしてもいいぐらいです。

 

かつて、多くの企業でも同じような問題が発生したことがありました。この時多くの企業では、Webマスターを社長直属で権限のあるポジションにしたり、「企画・経営部」に組み込んだりして、社内の情報発信に対する新しい考え方を浸透させましたが、このやり方も有効かと思います。

※Webマスターは、サーバやネットワークを管理する技術担当とは別だということに注意してください。まして、デザインができそうな(?)若手でもありません。

 

 

自治体サイトが使いづらい、根本的な理由

Web site idea
Web site idea / Leonid Mamchenkov

さて、2つの事例をお話ししましたが、どれも CMS などの技術的な仕組みとは無関係に発生するということは理解いただけるかと思います。これらはシステムの問題ではなく、「運用の仕組み・体制」の問題です。ですから、CMSの導入によってサイトの運用管理がラクになったとはいえ、「わかりづらい」が発生し続けてしまうのです。

多くの自治体で、「CMSが導入されれば、メニューが統一されてわかりやすくなり、担当職員が自分で更新できるようになるので更新頻度があがります。」としてCMSを導入してきました。それはある面ではとても正しいですが、すべての問題を解決する魔法のツールではないことも確かです。CMSを利用する前に、サイトの位置づけに対する認識と、それを運用するための仕組み・体制がなくてはいけません。誰に、何を、どう伝え、そのためにどこに情報を掲載しないといけないのかを判断するのは、CMSではなく人間なのですから。

 

何度もお話ししているようにこの問題は、CMSなどの「システム」の話ではありません。さらにサイトの「メニュー構成」の話でも「サイトデザイン」の話でもありません。そうではなく、わかりづらさの原因は「意識や組織」そして「運用の仕組み」の中に内包されているのです。

 

サイトのリニューアルの際、このような話をWeb制作会社の方はご説明してくださったでしょうか。システムの導入提案を持ってこられた業者さんが説明してくださったでしょうか。

 

このような問題を回避するためには、どのように運用するのかというノウハウを自治体自身の中に貯めるしかありません。そして、担当職員が異動になっても運用できる体制を整えるしかありません。

 


■事例・実績から

講演・セミナー(自治体向け)

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自治体サイトの運営・課題についてお話しさせていただきました。

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観光でのネット活用についてお話しさせていただきました。

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