次の方向性を見いだせていないこと自体が課題
CMS も、アクセシビリティ、ユーザビリティも、「自治体と言えばここがポイント!」と言われるぐらいに、これまで(そして今現在も)制作のポイントとして指摘されてきたことです。この2点について、それぞれ内包する課題があることをお話ししました。
今回は、これとは別な切り口から、自治体ホームページが抱える課題について見ていきたいと思います。
結論から言いますと、禅問答のような言い方になってしまいますが、現在の自治体サイトが
●CMS ツールの導入による管理の効率化
●自治体サイトランキングを視野に入れた、アクセシビリティ、ユーザビリティへの対応
と言う方向性以外を見いだせていない…ということがこそが課題です。
恐らく、自治体サイトを運営している方自身も、目の前のサイトを見ながら、これからサイトをどう持っていけばいいかわからないでいらっしゃるのではないかと思います。また、サイト制作会社側も「CMSで運用管理をラクにしましょう!」「自治体サイトは、アクセシビリティ、ユーザビリティが重要です!」とは言ってくれても、それ以上のことはお話しされてこないのではないかと思います。実際、インターネット上の情報を調べていただけるとお分かりいただけますが、ホームページ制作会社側も、この2つの切り口から前に進んでいないというのが実情です。
「課題解決型」と「投資・創造型」
どうしてそのようになったのかと言いますと、おそらく、自治体の業務が「課題解決型」で進められるからではないとか思います。「課題解決型」とは、何か解決しなければいけない課題があって、それに対して予算を組んで解決していくというプロジェクトの進め方。少子化対策、後継者対策などなど「●●対策」という事業名とともに、課題を解決していきます。住民が安心して暮らしていける環境を整えることが自治体の目的であるとすれば、当然、課題解決型の志向があって当然。そのこと自体が問題ではありません。
一方、一般企業側の立場になると、もちろん顧客サービス対応や商品改善など「課題解決型」のプロジェクトはたくさんありますが、「投資・創造型」のプロジェクトの割合が大きくなります。新しい商品やサービスを創造・提案し、告知・広告・宣伝・営業を経てそれを収益につなげるという、とても基本的な企業活動です。課題解決型対応をしていくだけではビジネスがジリ貧になっていってしまうという一般企業の宿命です。
このような「課題解決型」「投資・創造型」という切り口で自治体サイトを見てみると、このようなことが言えるのではないでしょうか。
これまで自治体サイトが対応してきた、「CMS の導入」と「アクセシビリティ、ユーザビリティへの対応」は共に、自治体サイトに対する「課題解決型」の作業であったと。CMS の導入は、前々回にお話ししたように、担当者では管理・更新しきれなくなった運用の課題を解決したもので、アクセシビリティ、ユーザビリティへの対応は、市民からの「サイトがわかりづらい」ということへの課題を解決したものだと。
自治体の抱える課題の解決において、サイトをどう活用するのか
そうなんです!
自治体ホームページの多くは、これまで「サイトの課題解決」に軸足があったのです。サイトやサイト運営の問題(課題)を解決することに注力してきたということなのです。
一方で、現在の自治体が置かれている状況を考えてみれば、もう少し違う景色が見えてくるはず。少子高齢化による人口の減少、国の借金増による地方への交付金の減少などなどの流れの影響で、これから自治体間の競争になることは逃れられません。旧来のような国からの交付金の奪い合いという事にとどまらず、「東京から田舎に引っ越したい?だったらうちにおいでよ!」「うちで子育てすると最高だよ!」「農業するならここが最高だよ♪」というような一般の方々や企業の奪い合いです。地方の自治体にとって、見込み客は東京を中心にした都市部にいるかもしれませんし、もしかしたら海外かもしれません。
そういう方々に対して、自治体を売っていくために有効な最大の武器がWebサイトやインターネットの活用であることは疑いの余地がないことです。
【課題3】自治体サイトが外を向いていない。
現在の自治体サイトがもつ3つ目の課題(そして最大の課題)は、自治体サイトが内向きといいますか、マーケットを向いていないということなのです。これまでの自治体サイトで注力が注がれてきたのは「サイト自体」の課題解決でした。しかし、今後の自治体サイトに求められることは、「自治体のもつ課題解決に、サイト利用する」という「投資・創造型」のサイト利用なのです。「自治体の抱える課題の解決において、サイトをどう活用するのか」という考え方です。
一般企業は、常に新しい顧客を獲得するための活動が必要です。自治体が今抱えている問題や今後直面するであろう課題を考えると、「シティーセールス」という言葉が表しているように、一般企業と同じことが求められます。当然、自治体サイトでも「外」に向けて、魅力あるコンテンツや仕組みで、集客・コミュケニケーションを仕掛けていくことになります。
これは従来型の「情報公開」や「情報発信」とは違う切り口です。
※詳しくは下記をご覧ください。
自治体サイトは、外に向けてもっと積極的であっていい。
いや、積極的にならないと生き残れない。
特色ある施策や事業やサービスを、より魅力的・効果的に伝え、
移住者してくれる人や企業を増やし、地元の商品やサービスをより多くの方々に知っていただけるような「外」を意識したサイトに軸足を移さないといけないはずです。
(もちろん住民サービスとしてのサイトがこれまで通り必要なのは変わりません)
そのために必要なことは、サイトをシステム化することでも、すぐに業者に制作を依頼することでもありません。まして、今の延長でサイトを更新していくことでもありません。
「サイトをどう改善するのか(どういじるか)」の前に、まずは「自治体のもつどんな課題を解決するために、サイトが活用できるか」を議論する必要があります。この視点でサイトを捉えなおすということは、これまでの「情報公開」や「情報発信」という視点でなはく、「戦略的活用」や「マーケティング」という視点でサイトをとらえ直すということにほかなりません。
これによっては初めて、サイトにどんな内容(コンテンツ)や機能が必要なのか、誰に向けて情報発信するのか、どこと連携するとよりよいサービスが提供できるのか、どんな体制でプロジェクトを進めていくのか、という具体的な話に進められます。これまで自治体ホームページの作成のために行われてきた、開発会社によるシステム導入や制作会社によるデザインという作業とは性格が異なることはご理解いただけるかと思います。
1700の自治体による争奪戦 & アイデア合戦の時代に突入している今、恐らく、こういう取り組みをした自治体は生き残るでしょうし、取り組みをしなかったところとの差がどんどん広がっていくのではないかと思います。そしてそういう「におい」「流れ」を感じていらっしゃるのは、他ならぬ自治体の現場で働いている方々なのではないかと思います。
佐賀県武雄市は、Facebookへの全面移行という、一般企業ですら躊躇した思い切った決断をしました。決断の成果はまだ未知数ですが、「投資・創造型」のサイト利用であることは間違いありません。チャレンジしたというその事実だけでも投資・創造効果は抜群です。東京都の水道事業の海外展開のように、もしかしたら、将来、佐賀県武雄市による各自治体への導入支援サービスという形で、佐賀県武雄市が一気に新しい流れ(産業など)を切り拓く可能性すらあります。
※課題として、ソーシャルメディアのことは取り上げませんでしたが、これはまたの機会に。
次回はもう少し、具体的なことに焦点を当てて書いてみたいと思います。
次回もお楽しみに!
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