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Be-Chu' s Perspective

 

 

 

シリーズ「小さい町の観光サイトの作り方」、今回は第3話「観光サイト 作り方のポイント」です。

(シリーズが途中で止まっていましてスミマセン…)

 

途中で止まっている間にも日本の観光に関する状況も大きく変わり、とにかく「インバウンド」ということが大きく叫ばれるようになりました。
観光地域づくりマネージャーとして走り回る「八ヶ岳観光圏」の現場でも、インバウンドというキーワードを聞かない日はありません。実際、今年の訪日外国人旅行者数が2018年12月18日に3000万人を突破したとのニュースもありました。

訪日3000万人突破 過去最高を記録、4000万人へ施策強化 (観光経済新聞 2019.1.6)

 

そんな状況下、このシリーズを書く必要性はあるのかなぁ…とも思ったのですが、今回書いている内容は観光だけにとどまらず、実は中小企業のビジネスにもそのまま活用できる「サイトの考え方」でもあるので、ひとまずは続きを書くことにしました次第です。

 

 

小さい町の観光サイトの作り方(シリーズ全7話)

第1話 小さい町ならではのメリット
第2話 小さい町の観光サイト 考え方と戦略
第3話 観光サイト 作り方のポイント
第4話 事例紹介
第5話 運用の考え方
第6話 今後の動き 日本版DMO との関係を考える
第7話 「都会の視線」と「地方の視線」

 

 

第3話 小さい町の観光サイト 作り方のポイント

 

必要なのは「3つの要素」

観光でのネット活用というと、すぐにキャンペーンやプロモーションということに話が行ってしまいがちですが、まずは土台となる「サイト」というものがなくてはいけません。別な言い方をすると、キャンペーンやプロモーションの結果の着地点となる受け皿がなくてはいけません。「マーケティングの受け皿」という表現でもいいかもしれませんね。

これがいわゆる観光サイトということになります。

この観光サイト、次の3つの役割を担う必要があります。

 

  1. 調べる
  2. 魅せる
  3. 他を知る

 

(1)調べる

観光サイトの3大役割

この「調べる」はわかりやすいかと思います。
何かの観光施設について調べたいと思った時に、場所、営業時間、駐車場の有無、体験できることなどを情報として提供するということです。「提供する」というと運営側の言い方ですが、お客様からすると「知りたいことがわかる」「探したいことがわかる」という表現になります。

ということは、何を知りたいと感じるのか、ということからスタートする必要があるということでもあります。

場所や営業時間は想像が付くかとは思いますが、いざ観光するお客様の立場になると実は色々と気にしながら動いていることを思い出すのではないでしょうか。
「トイレは…?」「身障者用のトイレは…?」「子どものオムツを替えるところはあるかなぁ…?」「ミルク用にお湯をいただけるかしら…?」「車椅子で回れるかしら…?」「小さい子どもも楽しめるのかしら…?」「ハイヒールでも平気…?」などなど、本当にたくさんのことを気にしているものです。

 

小さい町の観光サイトの作り方 第1話「小さい町ならではのメリット」で、小さい町だからこそできることの一つに「表面的な情報だけでなく、深いところまで知っている」ということを紹介しました。小さい町だからこそ一つ一つの施設などについて詳しい情報を提供できる、ということです。同じことがここでも活きてきます。

ただ単に「施設がある」という存在証明的(?)な情報だけでなく、その施設の方と協力しながら紹介してあげるといいと思います。まさに小さい町だからこそできる体制だと思います。

 

※かなり高度な次元になりますが、実はこの「調べる」の先に、「手続に関するワンストップ窓口」という未来があります。
体験ツアーやアクティビティ、さらにはそこに移動するための交通手段などをワンストップで対応してもらえたら、こんなにうれしいことはありません。
「調べる」とはまた違う、予約・顧客管理・在庫管理などといった複雑な要素が入ってくる分野ではありますが、これらは「調べる」の延長上にあります。

 

 

(2)魅せる

2番目の「魅せる」は、「そこに感動があることに気づいてもらう」ということです。
「何コレ~~♪ 見てみたい!!」「うぉ~~!これやりたい!!」ということですね…(^_^;

例えば、こんなの見たら「行きたい~!」って思いますもの…

 

 

 

 

これまでの観光サイトでは、実はここはあまり何もされていませんでした。
何もされていなかったといいますか、観光サイトというと「観光施設事典」がほとんどでしたので、施設の外観写真が1枚掲載されているだけ…のような状態です。

 

一方で、この部分が今一番熱くなっている部分でもあります。
要因は3つあります。

一つ目は、地域おこし協力隊が各地域から情報を発信できるような体制が出来てきたこと。
二つ目は、ドローンや360度カメラ、スマホによる動画撮影など、これまで高価で手が出せなかった新しい機器・機材による映像表現がで広く可能になったこと。
三つ目は、「インスタ映え」という言葉に象徴されるように、「スマートフォン×SNS」によって「魅せるコミュニケーション」が当たり前になってきたこと。

 

↑でピックアップした動画も、別にプロのカメラマンがお金をかけて撮影したものではなくスマホで撮影されただけの動画です。それでも、見ただけで行ってみたいと思うスイッチが入りますね。
放送局向けにしか機材がなかった以前に比べると、今ではお金をかけることなく小さい町でも(ビジュアルで)魅せる情報は作れます。それによって、これまでの「この公園では、四季折々の素敵な景色が見られます」とだけの紹介文に比べたら、圧倒的に違う魅力的な情報になるはずです。

 

※特別な「絶景映像」だけがこれに該当するわけではありません。
例えば、海外メディアが紹介したこの柳川(福岡県)の川下りの動画、海外では Woo! というコメントがいっぱいです。 

 

※この「写真を利用して魅せる」という要素を前面に出した観光サイトがここのところ多くなっているのですが、「魅力的な写真を大きくドカン!」と掲載しているだけが多いような気がします。魅力的な写真だと一瞬、「おっ!」って思うのですが(笑)、その先の情報がないんです。
またはトップページだけ魅力的な写真でお~~!とさせておいて、サイトの中はこれまでの情報と何もかわらない…ということもよくあります…(^_^;
とてももったいないなぁ…と感じます。
(そうなる原因もわかるのですが、それはまたの機会に)

  

さて、「魅せる」というと、どうしても魅力的な写真や動画のことばかりに注目が行ってしまいますが、実はそれだけではありません。
もう一つ重要なことがあります。それは「物語をしっかりと伝える」ということです。ここポイントです。d(^_^)

 

例えば、あるお寺があったとします。別に国宝でも何でもなく、特別見事な景色があるわけでもありません。ですがこのお寺は、その地域の人にとっては欠かすことのできない存在で、心の拠りどころになっているとします。
このようなお寺は全国は山のようにあり、観光サイトでも「観光スポット」や「名所」として紹介されたりするのですが、「●●年に建立。△△△がここを訪れた際に句を詠んだ」とだけ掲載されているのが多くの場合です。

このお寺、決して全国的に有名なお寺ではないかもしれませんが、△△△のファンであったりこよなく愛する方であれば、この寺でどんな句が詠まれ、その寺を訪れた訳やそのような句になった背景やいきさつを知りたいと思うはず。また、このお寺がその地域の方々の心の支えになっているのだとすれば、それはどうしてなのか、どのぐらい熱く愛されているのかも大切な「伝えるべきこと」になります。なぜなら、絶景や風光明媚な場所を見たりアトラクションを体験することだけが観光なのではなく、「その地域の暮らしや文化に触れ、その地の人々と触れ合うこと」が観光だからです。(観光というか、ツーリズムという表現の方が近いかもしれませんね。)

ですから、このお寺には、その地のあらゆることが凝縮されているはずなんです。その地域がその地域として現在まで続いている「物語」がそこにあるはずなのです。きっと、その地域の方もそれを表現していないだけで…。

 

せっかくですから先ほどの「柳川の川下り」で見て行こうと思います。
(別に柳川市に何かご縁があるわけではなく、たまたまあの海外動画を見て興味を持って調べてみようと思っただけです…(^_^;)

先ほどの海外での動画は、柳川の川下りの「アトラクション的要素」だけが抜き出されている動画でした。これはこれで「興味を持ってもらう」であったり「世界に知ってもうら」 という「発見してもらう」ということではとっても大きな効果があるのではないかと思います。

一方で、柳川の川下り、約1時間10分の船旅です。ですから、この橋の上を船頭さんがピョッン!と飛び降りるのは全体のほんの一瞬で、川下りの本質的な体験は別なところにあります。観光サイトでは、

まちの中を縦横に流れる「掘割」に、しだれ柳の緑が映え、赤煉瓦の並倉や白なまこ壁、水面にはウォーターヒヤシンス等の水草を愛で進む「どんこ舟」。ゆったりとした贅沢な時間を過ごしてみませんか。
柳川市の観光サイト

 

と紹介されています。川下りを運営している会社のホームページがいくつかあってその様子などがわかるのですが、この記事をご覧になっているみなさんに川下りの様子が一番端的にわかるのは↓の動画かな…と思いましたので動画を入れておきますね。
柳川フィルムコミッションさんが作成した動画です)

 

きっとこのようにゆっくりと1時間、柳川の「掘割」の景色を見ながらゆったりと進んでいくのだと思います。
動画の中で、女子旅の皆さんが「うわ~~きれ~~い♪」って言ってましたね。

 

さて、何の話をしていたのかというと、「魅せる」の中には、写真・映像とは別にもう一つ「物語をしっかり伝える」というポイントがあるということでした。

この川下りの「物語」って何でしょう…?
私は調べてしまったから知っているのですが(笑)、実はこの「掘割」、映像では街を流れる川ではあるのですが、単なる川ではないのです。
「掘割」ができるまでの歴史と、柳川の暮らしの中での「掘割」が担ってきた役割、そして柳川の方々にとって「掘割」を持つことの誇り。
これらが物語として土台あって、その上で川下りがなされているんです。

 

下記の動画をご覧いただけますか。

掘割のめぐる街 柳川」(水郷柳川観光株式会社)

 

動画からいくつかのポイントを抜き出すとこのようになります。

  • 掘割は、大きな川から民家の一軒一軒まで張り巡らされていて、柳川市全体では470kmにもなる。
  • 今では水郷の町柳川ももともは水が多かったわけではなく、掘割を掘り雨水を貯めたり川から水を引き入れることで今のような形になった。
  • 人々はかつて、飲み水も含めて、生きていくためのすべての水を掘割から得ていた。
    そのため厳しい決まり事があった。掘割の水は命の水だった。
  • 高度成長期に上水道が整備され、掘割の水を飲み水にすることはなくなった。
    その影響で掘割は、下水・ドブ川となり、ゴミ捨て場となり、悪臭を放つまでになった。また掘割を埋め立て下水道として利用する案も持ち上がっていた。
  • しかし市民の手によってもう一度清らかな掘割を取り戻すこととなり、多くの努力によって現在のような清らかな水が流れる掘割をもう一度手に入れることになった。
  • その努力の結果、今、こうして柳川の川下りが実現されている。
  • 掘割に架かる橋は、わざと流れの障害になるように川幅を狭めて造ってある。理由は...ナイショ(笑)
  • 掘割に架かる橋は、上が広く下が狭いV字型になっている。理由は...ナイショ(笑)
  • 大潮の満潮になると、海面の方が掘割の水面よりも高くなる。でも水は逆流しない。理由は...ナイショ(笑)
  • 2月になると「水落ち(掘干し)」といって、掘割の水を全部抜いて市民総出で掘を掃除する。泥は肥料に、魚は捕獲して食べる。

 

 動画からわかることは、とにもかくにも「柳川の方々は、掘割とともに暮らしている」ということです。
私はこれらの柳川川下りがもっている物語を知った時、うわ、行かなきゃ!と思いました。もしこれらのことを知らなければ、「街を流れる川を、街並みを見ながら単に下る」というものになっていたと思います。イヤな言い方をすると、船から見える街の景色が楽しいか、船頭さんの話が面白いのか、ドキドキがあるのかという、体験判断です。(「景色が楽しいか、話が面白いのか、ドキドキがあるのか」というのはディズニーランドのジャングルクルーズと比較されるような、アトラクションの体験です…)

ですがそこに「柳川に2,000年前から続く暮らし」という情報(物語)が加わった瞬間に、川下りはジャングルクルーズのようなアトラクションなのではなく、「この地でしか味わえない、その地の文化に触れる唯一無二の体験」に変わってしまいました。

これが「物語をしっかり伝える」ということなのだと改めて実感しました。

 ※さらに、高畑勲監督、宮崎駿製作によるドキュメンタリー映画「柳川堀割物語」「柳川堀割物語」(1987年公開)があることも知りました。

 

さらに、物語を知っているかどうかは、実際の川下り体験においても大きく違ってくるはずです。
掘割の物語を知らない人にとっては川からの景色がどうかをアトラクション的に見るしかないのですが、物語を知っている者にとっては、家屋の庭から古い石段が伸びているのを見て暮らしの中の掘割の役割を実感するわけですし、両岸が狭くなっている橋をくぐる度に、掘割に秘められた先人の知恵を感じることができます。

川下り体験が終わった時の感想も違ってくるでしょう。
「川下り面白かった♪」ではなくて、「柳川の掘割、スゴイところだった♪」と。
これはマーケティング的に言えば、「情報によって体験の意味づけが変わる」ということでもあります。d(^_^) 

 

最初の海外メディアでの動画は(川下りの本質とは離れた一時的な)「アトラクション」 という切り口。
2番目の春の川下りの動画は(その地の暮らしには触れない領域での)「掘割から見える春の素敵な景色」という切り口。

どちらも最初に「知ってもらう」ためには必要なことです。
その先にもう一つ「物語をしっかりと伝える」というものがあると、きっと川下りの体験がもっと豊かで、ツーリズムに寄り添った貴重な体験になるのだと思います。

だって、「アトラクションが楽しそうだから行く」「景色が綺麗だから行く」ではなくて、「柳川だから行く」ということになりますもの♪
(前2つは柳川でなくてもOKな要素です。でも3番目は柳川でないとダメなんです…)

物語を伝え「掘割のある暮らし」が「柳川に行く理由」になることで、「その地だからこその食・文化・風習・工芸品」という、その先にあるさらに深い掘割体験へとつながっていくに違いありません。

 

 

(3)他を知る

観光サイトの3大役割

観光サイトの役割3番目は「他を知る」です。

第2話「考え方と戦略」で、情報を探している人は自分が興味のある情報だけを探している…ということをお話ししました。カヌーのことを探している人にとっては、「○○公園」も「××町」も、最初は頭にないという表現で紹介しました。

その方の興味にしたがってせっかく観光サイトに来ていただいたのですから、その興味以外の魅力も知っていただくことに越したことはありません。「エリア内の他の感動を知ってもらう、発見してもらう」ということですね。d(^_^)

 これには、情報の各ページに他の紹介への案内(サジェスチョン)があると有効です。
例えばメディアサイトでは、1回の訪問でいくつものページを見てもらいたいので、各記事の最後には他の記事への案内が入っていたりします。そのイメージです。見ていたページに「何コレ~~♪ 見てみたい!!」「うぉ~~!これやりたい!!」というものが入っていたりしたら、つい見てしまいますもの。

そうすることで、「カヌーをしにここに行ったら、こんな絶景露天風呂にも入れるのか~」とか、「ここでキャンプをしたら、近くの農園でブルーベリー狩りが出来るんだね。そのままキャンプ場でジャムを作って、パンも焼いて食べたらおいしいかも!」と、魅力がどんどんと広がっていきます。

 

どの地域でもそうですが、観光事業の実際は各企業(事業者)が担っています。各企業はそれぞれの観光事業で個別にホームページを持っていたりします。ですが、「Aに来た人にBも知ってもらう。Aに来た人をCにも誘導する」というような各事業をクロスさせて「他を知ってもらう」ハブの役割を担えるのは、観光サイトだからこそできるものです。

 

 

次回、第4回は、事例のお話です。


次回もお楽しみに!


 

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