Google・SNSの次に来る、AI時代の情報発信戦略を中小企業向けにやさしく解説
検索、と聞くと、なんとなく「Googleで調べること」というイメージを持たれている方が多いかもしれません。でも実際には今、その「検索」という行動そのものが、大きく変わりつつあります。そしてこの変化は、単にツールや手段の話ではなく、「どうやってお客さんとつながるか」という商売の根本にも影響を及ぼしはじめています。
このように書くと、「インスタなどの SNS でお店を検索する」という話のように思われてしまいますが(実際、SNSでの検索は非常に多く行われています)、今回の話はそのさらに一歩先の話題です。
今回ご紹介するのは、アメリカのSEO業界では有名なBenu Aggarwalさんが書いた、「AI and local search: The new rules of visibility and ROI in 2025」という記事です。この記事では、「ローカル検索」がどう変わってきて、今どこに向かおうとしているのかが、とても整理された形でまとめられています。元記事は下記でご覧いただけます。
AI and local search: The new rules of visibility and ROI in 2025(Search Engine Land)
以下、「Local search in 2025」と表現しますね。
この記事のポイントは、「Googleで検索してもらって、マップに出てくることが大事」だった時代(Local 1.0)から、「SNSや動画などで、お店の魅力や体験がユーザーと感情的につながることが重要になった」時代(Local 2.0)を経て、今は「AIに“このお店がいいですよ”と推薦されることが大事」な時代(Local 3.0)に変わってきた、という流れをとらえていることです。
ちょっと専門的な言葉も出てくる記事ですが、地方で事業をしている私たちにとって無関係な話ではありません。このBenu Aggarwalさんの記事を紹介しながら、さらに地方・中小企業の私たちの視点に立って、「じゃあ、私たちは何をすればいいのか?」というところまで考えてみたいと思います。
ローカル検索の進化 Local 1.0 → 2.0 → 3.0
検索の世界も、時代とともにだいぶ様変わりしてきました。
この「Local search in 2025」では、その変化を3つの段階に分けて説明しています。
Local 1.0:「そこにある」ことを知らせる時代
一番最初の段階、いわゆる「Local 1.0」は、とてもシンプルでした。
お店や会社がGoogleマップに載っていて、営業時間や電話番号が間違っていない。とにかく「正しい情報を出すこと」が目的でした。いわば、地図上にピンを立てることがすべてだった時代です。
Googleビジネスプロフィール(旧・Googleマイビジネス)や、地域のディレクトリサイトなどに登録し、「うちの店、ここにありますよ」と正確に伝える。それだけでも検索に出てきて、お客さんが来てくれる可能性がありました。もう少し言えば、ここに「口コミ」やお店の評価(星の数)というお客さん評価が加わり、お店選びがなされていました。
Local 2.0:「どんなお店か」を伝えて、選ばれる時代
次に来たのが、「Local 2.0」と呼ばれる段階です。
このあたりから、「載っていればOK」ではなく、「載っている中からどうやって選ばれるか」が勝負になってきました。
SNSや動画の登場が大きなきっかけです。Instagramでおしゃれなカフェの写真を見て、「ここ行ってみたいな」と思う。YouTubeで紹介されていたラーメン屋に行列ができる。そんなふうに、「魅力的に見えるかどうか」が、お店選びに直結するようになりました。
この時代に求められたのは、「お客さんの心に響く発信」です。写真、動画、レビュー、ストーリー。どんな想いでやっているお店なのか。どんな商品が人気なのか。人の感情に触れるような情報が大事になってきたわけです。
Local 3.0:AIが“代わりに選ぶ”時代へ
そして、いま私たちが直面しているのが、「Local 3.0」という新しいフェーズです。
ここで何が変わったのかというと、「お客さんが調べて選ぶのではなく、AIが代わりに選ぶ」ようになってきたということです。
たとえば、「この近くでおすすめのカフェある?」とChatGPTやGoogle Geminiに聞くと、「◯◯カフェは人気です。ラテアートが美しいと評判です」といった答えが返ってくるようになります。
ここで重要なのは、AIがどこからその情報を引っ張ってきているのか、ということです。
SNSでどれだけ素敵な写真をアップしていても、それだけではAIには伝わりません。AIが見ているのは、「構造化されたデータ」「レビューの傾向」「そのお店が “意味的にどう理解されているか” 」という情報です。
つまり、「人に伝える」のではなく「AIに理解させる」ための情報発信が必要になってきた。これが、Local 3.0の大きな特徴です。d(^_^)
時代 | 特徴 | 主な行動 | 必要な対策 |
---|---|---|---|
Local 1.0 |
「正しく載っている」ことが重要 |
Googleマップで調べる |
名前・住所・電話番号情報の整備・登録 |
Local 2.0 |
「魅力的に見える」ことが重要 |
SNSで写真・動画を見る |
SNS・動画での共感発信 |
Local 3.0 |
「AIに推薦される」ことが重要 |
AIに尋ねて答えをもらう |
構造化・レビュー・Web整理 |
SEOの話ではない?
伝える視点で考える Local 3.0
ここまでの話を聞くと、「なるほど、AIに情報を伝えることが大事なんだな」と思われたかもしれません。でも、ちょっと待ってください。
この「Local search in 2025」はあくまでもSEO=検索エンジン最適化の視点から書かれたものです。つまり、「Googleに評価されるにはどうすればいいか?」という話が中心です。
でも私たちが事業をしている現場で大切なのは、「Googleに好かれること」ではなくて、「お客さんとの関係性をどう築いていくか」ということ。この「Local 3.0」という流れも、突き詰めて考えてみれば、「お客さんに代わってAIが推薦してくれるようになる」と読み替えることができます。
つまり、お客さんの信頼を得ていればいるほど、AIもその店を推してくれるということ。
レビューが多いとか、サイトが丁寧に作られているとか、情報が正確で定期的に更新されているとか。
そういう「丁寧な積み重ね」が、これからの検索結果に反映されるようになってくるんです。
だから、「AIに向けて情報を構造化しよう」という話も、言い換えれば、「お客さんが信頼しやすくなるように整理しておこう」ということでもあるのです。
SNSだけで完結してはいけない時代
ここでひとつ注意しておきたいのは、local 2.0 から 3.0 に移り変わるからと言って、local 2.0 のポイントになっていたInstagramやTikTokでの発信が無意味になるわけではないということです。
SNSの発信は、これまで通り「人の心を動かす」ためにはとても大切な手段ですし、SNSによる情報発信は圧倒的にプラスです。
Local 3.0におけるポイントは、それだけで終わってしまっている場合、AIには「見えていない」ことが多いということです。
Instagramに投稿したカフェラテの美しい写真やリール動画。そこにたくさんの「いいね」がついたとしても、AIにはそれが「人気商品」だということがなかなか伝わりません。その投稿がWebサイトにも載っていて、「人気メニューのカフェラテ。SNSで話題のラテアート」という説明があり、レビューにもそれが繰り返し出てきていて、Googleビジネスプロフィールにもちゃんと写真と紹介文が入っていて...そんな状態なら、AIも「このお店のカフェラテはすごく人気だな」と理解してくれるわけです。
人に伝える/AIに伝える:2つの回路を持つ
ここで、私たちは2つの回路を意識する必要があります。
1つ目は、「人に伝える」ためのSNSやチラシや動画といった表現の部分。
2つ目は、「AIに伝える」ための構造化された情報やレビュー、Web上での整理の部分。
これまでは、「伝えたつもりで終わっていた情報」がたくさんあったかもしれません。でもこれからは、「誰に、どうやって伝わっているか?」までを考えて、情報を出していく必要があります。
Local 3.0時代の情報発信、3つのポイント
ここまで「Local search in 2025」を土台にしながら見てきたように、これまでの検索や情報発信の考え方が大きく変わりつつあります。いま求められているのは「AIに見つけてもらえる情報発信」です。
SNSで写真や動画・文章を投稿しているだけでは、AIにとっては単なる「画像」「映像」や「テキスト」のかたまりでしかなく、その投稿の価値や意味を十分に理解してくれるとは限りません。これからは、人に伝えるだけでなく、「AIに伝える」「AIに推薦される」ための工夫が欠かせない時代になります。
そのためのポイントを、ここでは3つのステップに分けて解説したいと思います。
Step1:SNSで「見つけてもらう」投稿をする
まず第一歩は、InstagramやTikTok、YouTubeなどのSNSで「見つけてもらう」投稿を積極的に行うことです。
写真や動画の内容はもちろんのこと、キャプションの言葉選びも含めて、「これは行ってみたい」「美味しそう」「面白そう」と感じてもらえるような工夫が求められます。
SNSの中でも、発見の起点はフォロワーではなく、「おすすめに乗るかどうか」が鍵になっています。つまり、見知らぬ人に届くような投稿かどうか。言い換えれば、「検索される投稿」から「発見される投稿」へとシフトしているということです。
ここで心がけたいのは、「感情的な魅力」をしっかり伝えること。お客様がその場に行きたくなるような空気感、温度感をSNSの中で伝えていくことが重要です。
Step2:SNSの内容をWebでも整理・再発信する
次にやってほしいのは、その投稿内容をWeb上にもきちんと残すことです。
InstagramやTikTokに投稿して満足してしまうのではなく、
- 同じ写真を自社ブログやホームページに掲載する
- 「人気メニュー5選」などとして記事にまとめる
- Googleビジネスプロフィールにも同様の内容をアップする
といった形で、SNSで伝えた「感情的な魅力」を、Web上で「意味」として再提示することが必要になります。
ここでポイントになるのが「構造化」という考え方。
AIが情報を読み取るときには、ただ文章を眺めるのではなく、「これはお店の名前」「これは営業時間」「これは写真」「これはお客様の声」といった「意味のまとまり」を元に判断します。
少し専門的な話にはなりますが、「スキーマ(schema.org)」という仕組みを使って、ホームページ上の情報に意味付けを行うことで、AIからの理解度がぐんと高まります。
難しく考える必要はありません。今使っているホームページ制作ツールやGoogleビジネスプロフィールなども、ある程度まではこの構造化に対応してくれています。大事なのは、「Instagramだけで終わらせず、Webにも整理して載せておく」ということです。d(^_^)
ここ数年、ネット上の情報発信やコミュニケーションの中心が「スマホ × SNS」になっている中で、「ホームページは必要か…?」という話題も多く見られました。実際、ホームページは作らずインスタだけのお店もたくさんあります。それはお客様と出会う場やコミュニケーションの接点が、ホームページではなくてSNSに移行したからです。
ですがこの local 3.0 においては、「その情報をどうやってAIにも伝えるか」ということが持ち上がってくることによって、local 1.0とは違った位置づけでホームページが見直されることになります。
Step3:レビューやお客様の声を「意図して」積み重ねる
そして3つ目は、レビューやお客様の声を「意図して」積み重ねることです。
これはGoogleマップ上の口コミだけではなく、SNSでのお客様の投稿や、アンケートの声、ブログでの紹介記事なども含みます。
AIは、どのお店を紹介するかを決めるとき、こうした「第三者の声」や「実績」に注目します(しているとされています)。特に信頼性の高いレビューや、多くの人が支持しているという証拠があると、より優先して紹介されやすくなります。
だからこそ、「気に入ってくれた方にレビューを書いてもらう仕組み」をちゃんと用意しておく必要があります。もちろん、「お願いできますか?」と口頭で伝えるだけでもいいですし、店内にPOPを置いたりしてもOKです。
AI時代における「選ばれるローカルビジネス」の条件
ここまで見てきたように、Local 3.0 とは「AIが選ぶ時代」のことです。でもそれは、何か特殊なことをやらなければならないという話ではありません。むしろ大事なのは、今まで当たり前だと思っていたことを、ちゃんと整理して、見える形にしておくことです。
「AIが選びたくなる店」とは?
AIは人間ではありません。なので「雰囲気がいい」とか「なんか感じが良さそう」といった、感覚的な部分は読み取れません。その代わりに、レビューの内容や頻度、商品の説明文、サイトの構造、画像の説明タグ、位置情報など、はっきりと言語化された情報をもとに判断します。
つまり、
- ちゃんと更新されているか
- 商品の説明がわかりやすいか
- レビューがついているか
- 人気商品が何か明確になっているか
といった、「特徴や強みの基本」がデジタルでも見えるようになっているか、が問われてくるということです。
「人に伝える」と「AIに伝える」の両立を
これは、「SNSで投稿をしなくてもいい」という話ではありません。むしろ、人の心に響くコンテンツはこれからもずっと重要です。ただ、それだけでは足りない時代になってきているということ。
SNSで人気の投稿をしたなら、それをきちんと意味づけて、自社サイトやGoogleビジネスプロフィールでも見えるようにする。お客さんに褒めてもらったことがあるなら、それをレビューとして残してもらえるように導く。
そんなふうに、「感覚的に伝える」発信と、「意味として残す」情報設計の両輪で動いていく必要があるとういことです。これが、local 3.0 におけるポイントになります。d(^_^)
まとめ:検索は「選ばれるための勝負」に変わった
検索の主役は、「探す人」から「答えるAI」に変わろうとしています。
Local 1.0 の時代は、「とにかく地図に載ること」が重要でした。
Local 2.0 の時代は、「魅力を発信して、選ばれること」が大切でした。
そして Local 3.0 の今は、「AIが このお店がいいですよ と推薦してくれるように整えておくこと」が求められるようになっています。
とはいえ、私たち中小企業がやるべきことは、決して特別なことではありません。
Instagramに投稿した素敵な写真を、自社サイトやGoogleプロフィールにも載せる。人気のメニューを、しっかり言葉で紹介する。お客さんからの声を、レビューとして残してもらう。
そんな日々の積み重ねを、「人にもAIにも伝わるように整える」という意識が、これからの時代には必要になってきます。
検索という行動がここまで大きく変わろうとしている今、この変化を、「難しそう…」と避けるのではなく、「情報の伝え方を見直すチャンス」として捉えてみてはいかがでしょうか。
※以前の記事で「メディアが変わると、勢力図がリセットされる」ということを解説しています。
合わせてご覧いただくと、変化のタイミングの見方が変わるのではないかと思います。
→ 今、ネットの世界でおきていること(2024)
Local 3.0 は、私たちのような地方の小さなお店・会社にも、もう一度見つけてもらうチャンスをくれる時代なのかもしれません。
次回をお楽しみに!
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