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Be-Chu' s Perspective

 

 

「誰でもインフルエンサーになれるのか?」
これは、SNSが当たり前の時代において、多くの人が一度は心に抱く問いです。
YouTubeやTikTokを開けば、一般人が突然バズり、一夜にして数万、数十万のフォロワーを得る姿を目にします。その一方で、膨大な数のアカウントが日の目を見ずに消えていくのも事実。インフルエンサーは「才能」や「特別なキャラクター」を持つ人だけがなれるのか。あるいは、誰でもインフルエンサーになれるのか。

この問いに対し、BBCが興味深い実験をしましたのでご紹介したいと思います。

 

 

BBCの記事はこちらです

誰でもインフルエンサーになれるのか? ~BBCの実験から

誰でもインフルエンサーになれるのか?フォロワーゼロの3人が検証
Can anyone become an influencer? Three people with zero followers find out(BBC)

 

 

先に結論をお伝えすれば、この記事での答えはこうです。

「誰でもインフルエンサーになれる。ただし、続けられれば」

 

ここではBBCの実験内容を紹介しながら、そこから浮かび上がるSNS運用の本質的な示唆を掘り下げ、中小企業や個人事業主がどのようにSNSを活用したらいいのかを考えてみたいと思います。

 

 

フォロワーゼロの3人の挑戦

 

 

実験の背景

SNSは、一部の人にとっては巨額の収入を生むキャリアパスになっていますが、実際には「誰も見てくれない」「アルゴリズムに翻弄される」という体験が正直、圧倒的に多いです…。そこでBBCは「ゼロフォロワーからでも、3か月あればインフルエンサーになれるのか?」を検証しました。挑戦したのは次の3人です。

  • エミリー:陶芸家、脳卒中を経験。TikTokで発信。
  • アルン:歴史学者。近世医学とヒゲの文化史を専門。TikTokで発信。
  • ダニヤ:舞台俳優・演出家。YouTubeで詩やパフォーマンスを発信。

 

エミリーの挑戦

エミリーは26歳で脳卒中を経験。舞台女優の夢を絶たれましたが、陶芸と出会い、人生を再構築しました。今回、「同じ経験をした人に希望を届けたい」と、ほぼ未経験のTikTokに挑戦しました。

最初の動画は再生2回。陶芸や猫を映した動画もほとんど伸びませんでした。しかし「陶芸が人生を救った」と語った動画が数千回再生され、同じように脳卒中を経験した人から感謝のコメントが届くようになります。これは大きな喜びでしたが、同時に、「コメントにすべて返さなければ」「誤解される発言をしてはいけない」というプレッシャーと重荷にもなったようです。

そして「カメラに話すと自分が演じているように感じる」「本当の自分を出せていない」という葛藤も感じるようになりました。
最終的に私生活の問題も重なり、彼女はSNSから距離を置くことを決めました。

 

アルンの挑戦

アルンは大学で歴史を教える研究者。SNSを教育の手段にできるのではと考え、実験に参加しました。最初の動画は数百回再生。地道に投稿を続け、やがて1万回を超えるヒットも出ました。しかし彼は喜びよりも後悔を覚えます。「数字を取るために学術的誠実さを削ってしまった」と。

さらに脱毛症に関する心ない中傷コメントを浴び、「自分の外見をこれほど意識したことはなかった」と語っています。やがて彼は病気をオープンに語る動画を投稿。批判を逆手に取り、理解を広める機会としました。

また、大学が彼の動画を広報に活用するようになり、総再生は35万回を突破。論文よりも多くの人に届くようになりました。これを踏まえアルンは、「学者のキャリアを補完する新しい道」としてSNSを続ける決意をしています。

 

ダニヤの挑戦

舞台俳優ダニヤは、人と人をつなげたいとYouTubeを始めました。最初は楽しく投稿し、瞑想や詩の朗読など自分らしい動画をアップ。しかしすぐに「もっと見られたい」と熱が入り、1か月で50本投稿。まるで依存症のように「次は何を出そうか」と考え続け、心身ともに疲弊していきます。
それでも続けた結果、少しずつ数字は伸び、チケット販売やワークショップの集客にもつながるようになりました。「楽しい」と「苦しい」が交錯しながらも、彼女はSNSを続けています。

 

これが3人の挑戦の概要です。

 

SNS運用における深い示唆

 

さて、ここからが本題です。

「誰でもインフルエンサーになれるのか」という記事タイトルの趣旨で言えば、どの程度の影響力を持てばインフルエンサーと言えるのかという定義の問題はあるものの、誰でもある程度の閲覧者を獲得することはできるというのが結論になります。
ですが、「可能です、チャンチャン!」ではあまりにももったいない内容が、このBBCの記事には含まれています。

むしろこの記事の真価は、3人の実験を通して「SNSが発信者に何をもたらすのか」を鮮明に示している点にあります。単に「フォロワーが増えた」「売上につながった」ではなく、もっと本質的な示唆が浮かび上がってきます。これは SNSを運用する私たちにも起こりえること(起こっていること)です。

これをぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。

 

「誠実さ」と「SNS的なわかりやすさ」は両立しにくい

アルンは「学術的誠実さを削ってまでバズに寄せた」と語りました。学問の世界では、先行研究との細かい差異や精緻な解釈にこそ価値があります。論文はその積み重ねで進歩します。ところがSNSでは、その精緻さは評価されません。むしろ「難しい」「長い」として切り捨てられてしまいます。
つまり、結果的に、「単純で刺激的な切り口」に変換しなければ数字は伸びないということです。

これは私たち中小企業にも当てはまります。
企業活動も含めて物事の多くは、白黒がハッキリしない、幅の広いグレーの領域でできています。ですが、そのグレーの差異を説明するよりも、それは白だ!黒だ!とハッキリと断言してしまう方がSNS的にはわかりやすく、数値を稼ぐことができます。ですから、本当はグレーの領域であったとしても、SNSでユーザーに伝えるための「翻訳」が必要になります。しかし翻訳しすぎると、本来持っていた(本当はこのぐらいのグレーの領域なんだよなぁ…という)誠実さを削ることになる。この誠実さとSNS的なわかりやすさのトレードオフは、SNS運用の根本的な矛盾です。

実際、私が今書いているこの記事も、まさにグレーの領域に位置する内容で、このこと自体はSNSには適していません。そんな細かい微細な指摘よりも、「フォロワーゼロでも誰でもインフルエンサーになれます!」と言い放ち、そのことだけを表現した方がSNS的にはわかりやすくなります。
ですが、そうすることは同時に、私が感じていることに誠実に向き合うことをあきらめざるを得なくなってしまいます。

アルンの「学術的誠実さを削ってまでバズに寄せた」という、後ろめたさとも割り切りともとれるこのスタンスは、実は、SNSに取り組む私にも、皆さんも起きていることなのです。

 

「素の姿」を演じるという二重構造

SNSは、テレビなどの旧来のメディアに比べて、演技することは求められていません。日常の出来事、日常の風景、自分が目にしたもの感じたものをそのまま友人やフォロワーに表現していくものだと認識されています。

しかし、エミリーは「コメントにすべて返さなければ」「誤解される発言をしてはいけない」という強いプレッシャーを感じました。SNSは「自然体でいい」と言われますが、実際には「自然体に見えるよう演じる」ことが強要されます。それはテレビのようなメディア以上に演技的です。なぜなら、テレビのように何かの役を演じるのではなく、まさに自分自身を演じなくてはいけないからです。「素直さを演じる」という自己分裂は、SNS特有の負担です。

私たち中小企業の現場でも同じことが起きます。
例えば、日常の会社の様子をSNSで伝えようとしますが、実際には伝えられない現実もあります。日常と言いながらも、それは、ユーザーから良く見えるように切り取った日常のような景色に他なりません。

「素の姿」を演じるという不思議な二重構造がここにあります。

 

自己像がSNSに規定される

アルンは「自分の外見をこれほど意識したことはなかった」と語りました。SNSでは、自分がどう見られているかが、イイネなどの反応やコメントによって常にフィードバックされます。その結果、現実の自分ではなく「視聴者に映る自分」が自己像を支配するようになります。
これはSNSが「鏡」ではなく「レンズ」であることを意味します。
ありのままの自分を映すのではなく、他人の視線を通して加工された自分像が返ってくるということです。

個人事業主にとってこれは、致命的に大きな影響を持つことになります。
発信者=商品そのものである場合、外部の視線がそのままブランドを規定するからです。

 

楽しさは必ず摩耗に変わる

ダニヤは「楽しい」と始め、やがて「疲弊」しました。これは偶然ではありません。SNSは「次こそバズるかも」という報酬と期待を刺激する設計になっているからです。そのため、熱意や楽しさに任せると一時期は大量に投稿ができても、必ず摩耗や依存に陥っていきます。残念ながら、「楽しさ=持続可能性」ではありません。特に、ビジネス・事業を目的にしたSNSの運用ではこれが顕著です。

このことは、会社がSNS運用を情熱や気合い・勢いに頼るのは危険だということを教えてくれます。SNSは継続することが求められます。だからこそ、情熱や気合いではなく、仕組みとして続けられる体制を整えなければいけないということです。

 

SNSは「販路」ではなく「環境」

アルンの動画は大学広報に、ダニヤの発信は観客動員につながりました。これは、必ずしも自身のSNSが直接売上を生み出すのではなく、「他の活動と循環して価値を生み出す」ものであることを示しています。
SNS単体で売上を作るのはかなり困難ですが、他の接点(店舗・イベント・仲間意識・顧客対応など)と結びつくことで、SNSは強力な価値を生み出すことができます。

私たち中小企業でも同じです。SNSでの情報発信単体が何か新しいフェーズを生み出すわけではありません。その情報発信が他の要素と絡み合うことで、これまでとは違うステージが組み立てられていきます。SNSを始めないと何も始まらないことは確かですが、SNSだけが何かを作り出すわけではないことは、ぜひ知っておきたい事実です。

 

実験の答え:誰でもインフルエンサーになれる

 

さて、BBC記事のタイトルに戻ってみましょう。

「誰でもインフルエンサーになれるのか?」
答えは「はい。続けさえすれば」です。

エミリーは一つの動画で共感を生み、アルンは数十万再生を獲得し、ダニヤは本業の集客につなげました。三者三様の形で「インフルエンサー化」が起こったのは、いずれもあきらめずに「続けたから」に他なりません。

ただし、その過程には「誠実さとの葛藤」「素直さの演出」「自己像の変形」「摩耗」という副作用も伴っています。BBCの実験からは、この副作用を抱えながら「続けられるか」がインフルエンサーへの分水嶺となっているように読み取れます。

少なくとも、何か特殊な能力がある人だけがインフルエンサーになるのではなく、私でもあなたでも、インフルエンサーになれる可能性があることだけは確かです。

 

私たちが見るべきこと

最後に、この実験から私たち中小企業が学ぶべきことを簡単にまとめてみましょう。

 

誠実さを守りつつ「翻訳」

アルンが直面した「誠実さを削った」葛藤は、企業にとっても起こる現実です。専門的で繊細な説明はSNSでは届きづらいですが、しかし削りすぎると本質が失われる恐れがあります。だから「専門性を顧客が理解できる形に翻訳する」ことがポイントになります。

 

「自然体」を戦略的に演出

エミリーのプレッシャーは「素直に見えること」が実は演出である示しています。企業アカウントでも「自然に見せる」ために、言葉の選び方・話す人の役割・出す映像の範囲を戦略的に決める必要があります。ただ撮影して出すのではなく、一歩引いたところから、それがどのように見えているのかを見る「目」「視点」を持つことの大切さでもあります。

 

自分がブランド化される覚悟

アルンが外見を意識したように、SNSは発信者そのものをブランド化します。本人にその自覚がなくとも、経営者が顔を出す場合、その人が「商品」として見られることでもあります。これをあらかじめ知っているかどうかは、後々大きな違いになります。

 

継続は、熱意ではなく仕組み

何度も言いますが、「続ける」ことこそがSNSの必須条件です。一方で、ダニヤが摩耗したように、情熱は必ず尽きてしまいます。「誰がどのペースで投稿するか」を仕組み化し、担当者の熱意に頼らない体制を作ることで、継続的なSNS発信ができるようになります。

 

SNSは他の活動と結びついてこそ

アルンやダニヤの事例が示すように、SNSは単独ではなく他の活動と結びついて成果を出します。私たちは「SNSで売る」ではなく「SNSを通じてお客様との接点を広げる」ことを意識することがポイントです。

 

 

BBCの記事は、インフルエンサーは「才能」ではなく「継続」の問題であるという、とても大切なことを教えてくれています。ただし、継続する過程では必ず副作用に直面してしまいます。これをどう捉え、どのように乗り越えていくのかのヒントもこの記事では教えてくれています。
ご興味ある方は、ぜひBBCの記事もお読みになってみてください。

次回もお楽しみに!

 

この記事の内容は、ポッドキャストでもわかりやすく解説しています。
通勤や作業の合間に、耳で聴いて理解を整理したい方におすすめです。ぜひ合わせてどうぞ♪

🎧 ポッドキャストで聴く:この記事のポイント

 

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